もう一度観たい、やばいB級映画 第一回「ジャージー・デビル・プロジェクト」
(このレビューはネタバレを含みます)
世の中の人々はB級映画と書けば何を想像するだろうか?
チープな映像、へたくそな俳優、そして笑えないコメディ描写、もしくはCG丸出しの怪獣などがあたるだろう。
そんな本作もその要素のうち二つがあてはまっている。
チープな映像とヘタクソな俳優だ。
だが本作はチープな映像とヘタクソな俳優の演技が功を奏した結果、伝説のホラー映画になった作品である。
何を隠そうモキュメンタリー映画で、本当の劇映画ですらないので俳優の演技もヘタクソであったほうがいいということになる。
様々なブログで本作は「ブレアウィッチプロジェクト」の元ネタだといわれているが、どちらかといえば「森」「森の中にある怪物」といったものをベースにしているだけで、さらにいえばどちらかといえばブレアウィッチはどちらかといえばこれらの作品の元ネタたる食人族のほうが近いだろう。
前置きはおいておいて、この映画の内容は森の中である自主製作テレビ番組のスタッフが惨殺される殺人事件から始まる。
容疑者として捕まったのは彼らに同行していたジム・スワード。孤独な自閉症のスワードはその後刑務所の中で自殺を遂げる。ジャーナリストのデビットはジムが犯人であるかどうかを疑い、様々な事実を検証していき、真実をつかみジムの無実を晴らそうとするというのが主題だ。
テレビ番組のスタッフたちは野心家の監督と彼にあきれている相棒とカメラマンで組まれていた。
彼らの狙いはアメリカのパインバレンズという森にいるといわれているUMA「ジャージーデビル」だった。
「ブレアウィッチプロジェクト」以降に制作された他のモキュメンタリー映画と異なり、徹底的にドキュメンタリーとして架空の殺人事件を追いかけていくのが非常に面白い。
例えば警察に取材に向かい「我々の捜査は何らミスはありません。ジムは犯人です。」と断言する警察を描いたかと思えばジムの面倒をみていた精神科医やマンションの管理人にも取材を行う。
当然彼らはジムの肩を持ち警察の捜査ミスを信じて疑わないので、エンディングを知るとジム同様に本当に哀れに見えてくる。
さらに殺された被害者たちのことを振り返ったり、関係者に取材を行うことで事実を積み上げていくというサスペンス映画の王道の道を走っていく。
というか正直まるで「世界が仰天ニュース!」の再現Vみたいなノリである。
ここまでは称賛したが正直サスペンス映画としては緊張感があまり長続きせずに途中でダレてくる部分がある。
特に主人公のデビットは何回同じ行動をしてるねん!という部分があり正直中盤あたりから眠たくなってくる。
観客がいい加減ダレてきた中、デビットのもとへいきなり謎のビデオテープが届く。
どうやらテープは番組のスタッフを殺した人物がうつっているとされるテープのようだ。
彼は業者(なかなか美人)に修復を任せジムの1日をもう一度検証していくために山に登っていこうとする。そんな中、テープの修復がついに完了をした。
業者の女性は再生されたテープの中身をみた。
そこには
デビットがうつっていた。
なんと、事件のすべての黒幕はデビット本人だった。
すべては彼の自作自演だったのだ。
そんな女性の背後にはデビットの姿があった。女性は逃げようとするがデビットに捕まり殺されてしまうのだった。
デビットは森の中で業者の女性の死体を捨てる。
そしてうわごとのように繰り返す。
「やはりジムは無罪と思われます。私はなんとしても真実をつかむべく・・・」
思うようなシーンが撮れないのか、何度も繰り返すデビット。
そんな彼を置いて寒々しい景色の中カメラはフェードアウトしていく。
真実は闇の中に消えていった。
はたして、「ジャージーデビル」は本当にいてデビットは彼に操られていたのか、デビットは完全に狂っていて狂気の作品を生み出したかったのか?
真実はなにもわからない、森の中にうまったままだ。
確かに映画としては退屈な部分もあり、今までモキュメンタリーだったのがいきなり劇映画になってしまうのはびっくりするかもしれないがそれを差し置いても本作はかなりその後のモキュメンタリー映画の中でも異彩を放った作品になっているのは間違いないだろう。
そして本作、なんとDVDが生み出される前後に生まれた映画であるためビデオしか見る媒体が残されていない「幻の映画」になっている。
アメリカではつい最近になり、ようやくDVDになったらしいが日本ではみられるかどうかはわからない。
ちなみに本作は主人公で黒幕たるデビットを「ワンピース」のサンジこと平田広明氏が演じている。
吹替のビデオをみつけたら氏のファンは確保しておいて損はないだろう。
(追記)
この映画はどうやら人類史上初のオンデマンド配信された映画だそうだ。netflixやニコニコなど最近は映画をネットで視聴することはできるが、これはそれらのご先祖様だということになる。